カズオ・イシグロの『わたしたちが孤児だったころ』を読みました。


上海で暮らすクリストファー・バンクスは、貿易会社勤めの父とアヘン運動に熱心だった母が謎の失踪を遂げ10歳で孤児に。ロンドンの寄宿学校へ通い、やがて探偵となって名声を得て、上海に戻って両親失踪の謎を解いていくストーリーです。

カズオイシグロらしい抑制された語り口はそのままで、でも孤児となった主人公の心の揺らぎだったり虚栄心が見え隠れして、その苦しさが窺われました。
これもまた喪失感というか、過去への後悔を多分に感じられるのだけど、最後には全て明らかになり、希望がある終わりでした。後半の描写はけっこうヘビーだったのでどうなることかと思ったけど、本当に良かった…。

私としては、以前ブログに書いた『わたしを離さないで』がダントツで1番好き。
この『わたしたちが孤児だったころ』は主人公の独特な心境のために、感情移入が難しかったです。